北関東を中心に135店舗を展開するショッピングセンターチェーンのベイシア様。2022年7月にLazuli PDPを導入し、本格的にEコマース(EC)へ取り組み、OMO(Online Merges with Offline)を推進してきました。 EC事業における主要なお取り組みは、楽天などモールに出店するネットスーパーと全国販売のオンラインショップ、自社アプリによる予約販売の3つ。オンラインショップの「ベイシア楽天市場店」は、2024年に念願の「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」のジャンル大賞を獲得しました。 2022年の着任以来、飛躍的な売上拡大を牽引してきたEC部 部長の戸枝 智存さんに、成長の舞台裏をお聞きしました。
--「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2024」の受賞、おめでとうございます。今回の受賞は社内外でどのように受け止められていますか?
ありがとうございます。「百貨店・総合通販ジャンル」としてはじめての大賞をいただきました。
2年前、表彰式を見学に行った時は、壇上を見上げて悔しい思いをしました。下から見上げるばかりではいけない、必ず壇上に上がろう、と話したものです。
ECに取り組む中では、ベイシアが全国的なブランドではないことを、嫌と言うほど感じてきました。店舗がない北海道・東北や西日本のお客様には、「ベイシア楽天市場店」と言っても、謎の会社でしかないのです。ジャンル大賞のリボンは、絶対にサイト上につけたいと思っていました。
実は私が着任する前、別のカテゴリでジャンル賞を受賞したことはあるのですが、今回の「百貨店・総合通販」は、よりベイシアらしいと感じています。
私たちのEC戦略は、SKUの拡大です。手当たり次第に何でも売ろうとする戦略は、スーパーマーケットでは、悪手とされます。しかし、ECではSKUの拡大こそ、売上の拡大だと信じて取り組んできました。Lazuli PDP導入前の2022年6月からだと、SKU数は、数十倍~百倍程度に増えています。その結果、売上もネットショッピングだけを切り出しても、5倍に増えています。
仕入れた商品をオンラインショップで販売するには、当然商品登録の作業が発生します。商品データを自動で収集・管理できるLazuli PDPは、戦略的に不可欠なソリューションでした。

SEO強化とAIタグ付けによる自然流入の増加
--SKUを増やす以外には、この3年間どのような取り組みをして来られたのでしょうか。
商品を仕入れて、PDPを活用して商品マスタを登録するまではできていましたが、その先として、どうやってお客様にアクセスしていただくか。マーケティングが、私たちに足りていませんでした。専門人材を採用し、それぞれのプラットフォームに合わせて集客する工夫をしていきました。
また、SEOにも力を入れました。SEOでは、商品テキストを充実させることが重要ですが、Lazuli PDPによって、情報をリッチにすることができました。
特に印象に残っているのが駄菓子カテゴリです。それまで取り扱っていないジャンルであり、一点あたりの価格が安いため、大きな期待はしていませんでした。特に販売促進もかけていませんでしたが、商品情報を整えてタグ付けをすると、自然とアクセスが増加していきました。今では、食品部門においてある程度の売上を占める一ジャンルになっています。
特におもしろかったのは、「うまい棒」の大容量セットが想像以上に売れ、販売促進をかけていなかった頃と比較すると、売上は5~6倍になりました。
AIを使ってタグ付けさせると、「バーベキュー」というタグが付けられました。「うまい棒」に対して、「お祭り」「パーティ」などのタグは、人間でも思いつきそうですが、「バーベキュー」はAIでなければ難しいでしょう。確かにバーベキューで色々な味のうまい棒があったら楽しそうです。
また、きめ細かい価格戦略の工夫もしています。
ECでよく売れる商品は、他店でも扱っているので、極力価格を下げて競争します。一方で、他店が扱っていない商品は、ある程度利幅を取ることができます。低利益でスケールを拡げる商品、販売数量としては少なくても利益を確保する商品のバランスをとりながら、事業として成立するように組み立ててきました。
例えば、私たちが重点領域としてきたペット用品は、今では価格競争が激しくなっています。利幅は小さいけれど、よく売れる商品です。
対して、意外にライバルが少ないのが冷凍食品です。冷凍庫がなければ扱えないので、他店と競合しない商品が多いのです。
商品情報の精度向上とチームの信頼性
--導入当初はLazuli PDPが抽出する商品情報の精度について、「100%ではない」とのご指摘をいただいていました。人が修正した情報をAIが学習することで、精度が向上する設計ですが、これまでご利用いただいて精度に変化はありますか?
商品情報は、最終的に担当者が目視でチェックしています。最近は、修正を依頼する回数が大幅に減りました。
Lazuli PDPの性能が向上していて、私たちが信頼できるようになっていると感じます。
商品マスタが生んだ新たなビジネス展開と社内データ活用基盤の確立
--ありがとうございます。商品マスタの管理について、社内で意識の変化などは感じていますか?
2025年4月に、ネットスーパーを運営されている「楽天マート」様で、ベイシアのプライベートブランド(PB)商品の扱いが始まりました。当社の業務としては卸なので、ECとは担当が違うはずですが、プロジェクトマネジメントを私が担当しました。この3年間、ECが取り組んできたノウハウが活用できそうな点が多かったことと、商品マスタに関しては、Lazuliと構築してきたものが使えそうだったからです。
PB商品を卸すのは簡単ですが、それだけでは楽天マート様は対応できません。ネットでは、商品があっても商品情報がない状態では、売り場に並べることができないからです。
(Lazuli PDPを導入する以前の)3年前では、楽天マート様での取り扱いは不可能だったでしょう。きれいに整った商品マスタがあったからこそ、極めて短期間でプロジェクトを進められました。
ECのSKU数を増やすため、Lazuli PDPを導入したときは、このようなビジネスに広がるとは、想像していませんでした。今後販売チャネルの拡大をはじめ、何をするにしても商品マスタはついて回るのだと再認識しています。商品マスタに不備があると、必ずどこかでスタックするはずです。
今回のプロジェクトで、さまざまな部門の社員が、商品マスタの重要性を理解したはずです。Lazuli PDPからのデータをベイシア独自の商品マスタに加工し、内製でPIM(商品情報管理)を構築しました。ECへの使用目的でつくったデータで、各部門の各用途で利用していくベースはほとんどできていると思います。
--今後の展望について教えていただけますか?
Cチームのなかでは、「CSV(Creating Shared Value)をやろう」と言っています。売り手よし、買い手よし、世間よし、の「三方よし」の経営です。
2022年に着任し、数億円の売上から、直近では100億円の売上目標を立てられるところまで来ています。しかし、目標を達成しても総売上3,000億円の企業のなかでは、ほんの一部にすぎません。数字を追いかけるより、お客様や社会に対して良いことをして、自然と利益が出る状態にすることが大切だと考えています。
例えば、購買データから、お客様が何を求めて利用しているのか、少しずつ顧客像が見えてきました。お客様ごとにおすすめの商品をご案内するなど、一人ひとりに寄り添った気の利いたサービスができるようになるでしょう。
ただ、個別最適化された環境だけを、お客様が求めているとは限りません。リアル店舗で魚のにおいがしたり、子どもがお菓子売り場で駄々をこねて泣いている声が聞こえてくるのが、生の暮らしであり、買い物の楽しさでもあるでしょう。オンラインとオフラインをマージ(統合)するのは重要ですが、リアル店舗とEC、それぞれの面白さは保ちたいのです。それが、ベイシアらしいOMOだと考えています。
ーー最後にLazuliに対してのご要望、期待を教えてください。
GoogleのVertex AIのように、他にも活用できるツールはあります。Lazuliがそれらと違うのは、ベイシアの個別の事情に寄り添っていただけるところです。前述のように、データから顧客像を分析する下地はできました。今後の施策にどう落とし込むか、一緒に取り組んでいきたいと考えています。
ベイシア楽天市場店 :https://www.rakuten.ne.jp/gold/beisia/
ベイシアネットスーパー:https://netsuper.rakuten.co.jp/beisia/
ベイシアのLazuli PDPの過去のお取組み事例:https://lazuli.ninja/useful/beisia/
Lazuli PDPとは:https://lazuli.ninja/features/






