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今なぜ商品マスタなのか?〜元大手コンビニエンスストアで商品マスタに携わっていた小林氏が語る理想の商品マスタとは〜

Apr.16.2024

本記事は、当社のアドバイザーであり、長年にわたり大手コンビニエンスストアで様々なご活躍を重ねてこられた小林敏郎氏によるものです。小林氏によるユニークな視点で特にプロダクトデータの重要性について、本コラムでは焦点をあてて執筆いただきました。


この記事では筆者が考える「商品マスタ」の重要性および可能性について、実体験をベースに様々な考察を加えながら解説していきたいと思います。皆様のビジネスに少しでもお役に立てれば幸いです。

1. はじめに

まずはじめに筆者のバックグラウンドからお話しします。というのも、「商品マスタ」に対する想いがどのような経験を経て醸成されてきたのかが一つのポイントであると考えるからです。

早速だが筆者は1997年に大手コンビニエンスストアに入社し2023年まで勤務しました。その後SaaSビジネスを展開する異業種に転職しています。コンビニ時代は店舗勤務を経て本社で新規ビジネスの立ち上げやデータ分析、データ分析基盤の構築などを経験してきました。特にデータ分析に関係する業務において商品マスタに深く関わらざるをえない状況になりました。 この記事をご覧になっている皆様の中には「商品マスタ」に対して何がしかの接点がある方が多いと思いますが、こういった経験を経て醸成された小売業視点からの商品マスタに対する私の考えや今後の展望についてお話していきます。

2. 商品マスタとは

簡単に言えば小売業における商品マスタは商品がメーカーから出荷され店頭に並び販売される過程で必要な個々の商品の情報について必要不可欠な情報をとりまとめたデータと解釈できます。例えばバーコードに使われているJANコードや商品名、レシートに表示する際の商品名(印字スペースの都合で商品名が省略されていたりする)といった情報はもちろん、商品が店舗に納品される際のロット数、商品のサイズ、配送時の温度帯(冷蔵かどうか等)、商品分類、商品採用日、メーカー名などが含まれています。

3. これまでの商品マスタ

前項で説明した通り、「これまでの商品マスタ」(以降「商品マスタ1.0」と呼称します)は商品を販売するうえで必要となる情報を徐々に付け加えながら進化してきました。しかしながらその主な目的は商品を店舗に配送する、店舗に並べる、POSレジで処理するといったオペレーションを遂行する為に最適化されてきたのです。と同時に、商品マスタ1.0は各小売業でローカライズされ独自の進化を遂げてきました。例えば商品分類・・・具体的にはポテトチップスであれば 「菓子>スナック菓子>ポテトチップス」といった階層で分類されます・・・についてはスーパーとコンビニでは大きく違っています。なぜなら取扱商品の幅・深さが異なるからです。例えばコンビニでは納豆の種類は3種類程度であるのに対して、食品スーパーでは15種類以上はあるでしょう。この場合、納豆の分類はコンビニでは「納豆」だけあれば十分ですが、スーパーでは

納豆(3個パック)
納豆(ひきわり)
納豆(小粒)
納豆(大粒)
納豆(カップ)
納豆(国産大豆)

などがあったりします。これはすなわち品ぞろえの方針を意味しています。そのため、小売各社の商品分類は社外秘・・・つまり商売の大方針だから・・・となっていることが多いです。

4. なぜ商品マスタ1.0の課題が顕在化したのか?

商品マスタ1.0の課題が顕在化した要因として筆者は大きく2つの要因があると考えています。一つ目はPOSデータからID-POSデータへの進化。二つ目はビッグデータを分析する環境が整備されてきたことです。POSデータの時代には商品分類ごとに、どの商品がどの程度売れたかを見るだけの集計で事足りた・・・というよりはコンピュータリソースを含めそれしかできなかったと言えるでしょう。ところが小売店が会員カードなどを導入しお客様を個=IDで捉えるようになり、クラウドコンピューティングやAIの登場などによりビッグデータ分析が容易に実行できる環境が整ってくると商品マスタ1.0の課題が露わになりました。お客様を捉える為の集計軸/分析軸が商品マスタ1.0では圧倒的に不足していたのです。

会員カード導入の基本的な狙いは、お客様を「個」として捉えるCRMの実現です。この時、会員の基本的な属性(性別、年齢、居住地、家族構成等)や購買履歴(ID-POSデータ)を使ってそのお客様を捉える(=分析する)のが一般的です。この一般的な属性情報を使って可視化できるのは「誰(性別/年齢)がいつ、どこ(店舗)で何(商品)を何回購入した(リピート率)か」ということです。しかしながら、ここには本当に知りたいコトが欠落しています。それは「なぜ買ったのか?」というコトです。

この「なぜ買ったのか?」という問いに答えるためにはいくつかの方法があります。もっとも古典的なやり方はアンケートで購入理由を直接お客様にヒアリングするという方法です。ただし、アンケートの実施には手間も時間もお金もかかってしまいます。そこで筆者が最終的に至った方法が「どんな価値観を持ったお客様が購入したか?」という手法です。例えば「家事に時間を掛けたくない」という価値観を持ったお客様がこすらず汚れが落ちる風呂洗剤を購入していれば、さもありなん。。。となるでしょう。この価値観による分析をしようとした時に商品マスタ1.0の課題が顕在化しました。そう、商品マスタ1.0には「家事に時間を掛けたくない」といった価値観に関する要素は何一つ入っていないのです。

5. これからの商品マスタ

ビッグデータを分析する環境が整いはじめている現在、分析を目的に加えた「商品マスタ」(以降「商品マスタ2.0」と呼称する)の構築が急務となっています。この商品マスタ2.0の構築においては商品DNAを加えるという方法が一般的です。

商品DNAとは健康や食、家事に対する意識(ダイエット志向・食の安全志向等)や、情報感度(新商品が好き・流行に遅れたくない等)、買物に対する価値観(セールに敏感/良いものであれば少々高くても良い等)などといった消費者のライフスタイルや価値観を軸に、各商品の特性を属性としてデータ化したものです。この商品DNAを集計軸/分析軸として利用することでお客様の価値観を類推します。

ただしこの商品DNAを各商品に付与するには大変なコストがかかります。例えばコンビニの場合、毎週200種類程度の新商品が発売されますが、この商品一つ一つに数十項目の商品DNAをバイヤーが付与する作業を考えてみてください。もちろん導入時には一括して付与する必要があるので数万もの商品が対象となり、気が遠くなる作業です。商品の種類が多いスーパーマーケットやホームセンターであればさらに大変な作業となることは言わずもがなです。 ちなみに筆者はこの気が遠くなるような作業を2回経験しています。最初に実施した時には筆者含め数名でかつ手作業で実施しましたが、それこそ気が遠くなるような作業でした。2回目は幸いにして外部の協力企業とある程度仕組化し実行したのでそこまでの作業ではなかったものの、かなりの金銭的コストが発生してしまいました。

6. あるべき商品マスタ

筆者は商品DNAの追加において、注意すべき課題が2つあると考えています。一つ目は商品DNAとして設定した項目が適切であるかです。例えば「環境に配慮しているか」という商品DNA項目があったとします。今でこそSDGsが浸透し一般的にも認知されているのでDNAとして設定すると思いますが、15年前ならどうでしょうか?商品DNAはその時々の社会情勢や消費者意識に応じて項目を変化させる必要があるといえます。

そして二つ目は各商品の商品DNAは変化し続けるということです。商品の持つ価値は競合商品の存在や時間経過によって変化することがあります。例えば新商品はその後既存商品になるし、雪印メグミルク社の「毎日骨太」という商品の場合、発売当初(1993年)は成長期の子どもをメインターゲットとしていたが、その後骨粗しょう症への対策が必要な年齢層へとターゲットをシフトしています・・・即ち商品の提供価値=商品DNAが変化しているのです。 このように導入・構築した商品DNAを含む分析目的の商品マスタを利用するためには絶え間ない更新作業が必要となります。そう考えるとLazuli社が提供する「Lazuli PDP」は商品名やJANコードをキーに様々な商品に関連した情報を自動的かつ随時更新しながら構築しており、前述の2つの課題を解決できます。あるべき商品マスタ、例えるなら商品マスタ3.0を構築するために現時点でもっとも理想に近いサービスといえるのではないでしょうか。

7. 終わりに

最後に余談ではありますが筆者がLazuli社を知ったのは創業間もないころです。自身で商品マスタ2.0を構築していたころで、ネットニュースを見て自分が理想とする商品マスタに関するサービス提供を目指していると知り、嬉しくていてもたってもいられなくなりこちらからコンタクトをとりました。そんなご縁もあり今回この記事を執筆することとなったことを付け加えておきます。


Lazuliではサイロ化された商品マスタをもとに、企業のデータ利活用に必要な「カテゴリ」や「特徴タグ」と呼ぶ商品DNAなどのプロダクトデータの生成、加工を行う「Lazuli PDP」の開発・提供を行なっています。顧客への情報提供やEC立ち上げ、データ分析など、さまざまな施策を行う際に必要なプロダクトデータが増える中で、それらの作業を一元化、自動化したいと考えている方は、ぜひこちらからお問い合わせください。

Lazuli PDPについてはこちら:https://lazuli.ninja/feature/