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AIを導入する企業から、AIが働く企業へ|Lazuli Executive Briefing 2026.10.15

AIを導入する企業から、AIが働く企業へ|Lazuli Executive Briefing 2026.10.15

生成AI

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業務効率化

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自動化

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コスト削減

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POS分析

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先日、GoogleがGeminiの新たなAIエージェント機能を発表しました。

GmailやGoogle Drive、Google Docsなど、複数のアプリケーションを横断しながら、AIが自律的に仕事を進めるというものです。

また、Metaの「Muse」についても、AIが独立した実行環境を持ち、ブラウザやアプリケーションを操作しながら仕事を進めるという興味深い動きが報じられています。

これらは、

これまで人間がソフトウェアを使って仕事をしていたのに対し、
これからはAIがソフトウェアを使って仕事をするようになる。

という流れが来ていることを意味しています。

もちろん、AIがツールを操作する技術自体は以前から存在していましたが、

個人の仕事や過去の文脈を理解し、複数のアプリケーションを横断しながら継続的に業務を進めるという方向性が、より明確になってきたように思います。

これは今後、私たちの働き方や企業のITシステムのあり方にも、大きな影響を与える可能性があります。

今回は、こうしたパーソナルAIエージェントの進化を取り上げながら、企業のIT戦略が今後どう変わっていくのかを考えてみたいと思います。

パーソナルAIエージェントは何が新しいのか?

では、今回のGeminiやMuseの動きは、これまでのAIエージェントと何が違うのでしょうか。

まず、Googleが発表したGeminiの新たなエージェント機能では、Gmail、Google Drive、Google Docsなど、日常的に利用している複数のアプリケーションを横断して仕事を進めることが目指されています。

例えば、「来週のA社との商談の準備をして」と依頼すると、過去のメールからやり取りを確認し、Google Driveから関連資料を探し、必要な情報を整理して提案資料のドラフトを作成する。

これまで人間が複数のアプリケーションを行き来しながら進めていた仕事を、AIが一連の業務として実行するイメージです。

一方、MetaのMuseについては、AIがクラウド上に独立した実行環境を持ち、ブラウザやアプリケーションを操作しながら仕事を進めるというアプローチです。

例えば、出張の手配を依頼すると、フライトやホテルを検索して比較し、スケジュールとの整合性を確認しながら、予約手続きを進めていく。

重要なのは、AIが情報を検索して回答するだけではなく、実際にソフトウェアを操作し、仕事を進めるという点です。

また、OpenAIのDotsのように、ユーザーの仕事や関心、過去のやり取りを記憶し、必要な情報を調べたり、先回りして作業を進めたりするパーソナルAIエージェントも登場しています。

もちろん、こうした機能のすべてが、現時点で人間の介入なしに実現できるわけではありません。しかし、各社が目指している方向性には共通点があります。

1つ目は、AIが個人の文脈を継続的に理解すること。

毎回ゼロから指示を出すのではなく、過去のやり取りや進行中の仕事、個人の好みや判断基準など、パーソナルな文脈をふまえて行動できるようになることです。

2つ目は、AIが複数のソフトウェアを横断して操作すること。

特定のアプリケーションの中でAIが支援するのではなく、AI自身が必要なアプリケーションを選び、操作しながら目的を達成するようになります。

3つ目は、AIが継続的に仕事を進められること。

一度の質問に答えて終わるのではなく、ある目的に向かって複数の作業を進め、状況の変化に応じて次のアクションを取る。必要に応じて人間に確認を求めながら、仕事を継続できるようになっていきます。

これらは個別には以前から研究・開発されてきた技術ですが、組み合わさることで、AIの役割は大きく変わります。

これまでの生成AIは、人間が何かをするための支援ツールという位置づけが中心でした。

しかし、パーソナルAIエージェントは、人間から目的を与えられ、自ら必要なソフトウェアを使いながら仕事を進める存在へと進化しつつあります。

そして、この変化はAIの使い方だけでなく、私たちが日常的に利用しているソフトウェアそのものの価値を変えていく可能性があります。

人間がソフトウェアを使う時代から、AIが使う時代へ

これまで、企業向けソフトウェアは人間が操作することを前提に進化してきました。

営業担当者はSalesforceを使い、経理担当者はERPを操作し、マーケティング担当者は分析ツールを使う。そして、ソフトウェア企業は、いかに人間にとって使いやすいUI・UXを提供するかを競ってきました。

しかし、AIエージェントがこれらのソフトウェアを操作するようになるとどうなるか。

例えば、営業担当者が「来週のA社への提案を準備して」と依頼するだけで、

AIがCRMから商談履歴を取得し、社内資料や商品情報を確認して、提案書を作成する。

さらに、商談後にはCRMを更新し、次のアクションまで準備する。

こうした働き方が一般化すれば、人間が個別のアプリケーションを操作する時間はなくなります。

ポイントは、ソフトウェアの競争力そのものが変わる可能性があるということです。

これまでは人間にとっての使いやすさが重要でしたが、これからはAIが必要な情報にアクセスできること、他のシステムと連携できること、安全かつ正確に業務を実行できることが、より重要になるでしょう。

もちろん、人間向けのUIがなくなるわけでも、既存のソフトウェアが不要になるわけでもありません。

ソフトウェアの価値がなくなるのではなく、その価値を利用する主体が人間からAIへと広がっていく。

この変化は、企業のソフトウェア選定やIT投資の考え方にも、大きな影響を与えるのではないでしょうか。

CIOは今、何を考えるべきなのか?

こうした変化の中で、このメルマガでは利用者の行動変化でなく、企業のCIOやIT部門がこれまでとは異なる視点が求められるようになることを挙げてみたいと思います。

特に、私は次の5つが重要な論点になると考えています。

1. ソフトウェアへの投資基準はどう変わるのか?

これまでのように、人間にとっての使いやすさや機能の豊富さだけでソフトウェアを評価してよいか。

今後は、AIエージェントからのアクセス性や他システムとの連携能力も重要な選定基準になると思います。

2. 既存のITアーキテクチャをどう進化させるべきか?

AIが複数のシステムを横断して働くためには、APIやデータ連携の整備だけでなく、AIが情報の意味や業務ルールを理解できる環境が必要です。

これまでのシステム間連携を前提とした設計から、AIエージェントによる業務実行を前提とした設計への転換が求められると思います。

そう考えるとSaaSや、大規模ソフトウェアが必要なのかも重要な論点かもしれません。

3. AIにどこまで権限を与えるべきか?

AIが情報を検索するだけでなく、メールの送信や発注、顧客情報の更新まで実行するようになれば、権限管理やセキュリティの考え方も変わります。

どこまでAIに任せ、どこから人間が承認するのか。AIの行動をどのように記録し、監査するのか。新しいガバナンスが必要になると思います。

4. AIプラットフォームへの依存をどう考えるか?

Google、Microsoft、OpenAIなどのAIエージェントが企業の業務の入口になるとすれば、特定のプラットフォームへの依存が強まる可能性があります。

どのプラットフォームを採用し、どこまで自社のデータや業務を委ねるのか。ベンダー戦略そのものを見直す必要があると思います。

5. IT部門の役割はどう変わるのか?

社員一人ひとりがAIエージェントを持つようになれば、IT部門が管理する対象は、システムやアカウントだけではなくなります。

AIがどのデータにアクセスし、どの業務を実行できるのか。その活動をどう統制し、最適化するのかが重要になります。


これまで企業は、人間が仕事をすることを前提に、組織をつくり、人を採用し、業務プロセスを設計し、それを支えるITシステムに投資してきました。

しかし、AIがソフトウェアを使い、実際の業務を担うようになれば、こうした前提そのものが変わっていく可能性があります。

例えば、これまで10人で行っていた業務を、管理者1人と100のAIエージェントで実現できるようになったとしたら、企業はどのような組織をつくるべきか。

あるいは、これまで数億円を投じて構築してきた業務システムの一部が、AIエージェントによって代替できるようになったとしたら、今後も同じようなIT投資を続けるべきなのでしょうか。

もちろん、すべての業務がAIに置き換わるわけではありません。

しかし、こうした変化が現実になれば、企業の生産性やコスト構造、さらには競争力にも大きな差が生まれるはずです。

今後、AIそのものの性能以上に、AIをどれだけ効果的に働かせられるかが重要になっていくと考えています。

そのためには、AIツールを導入するだけでは不十分です。

AIが必要なデータにアクセスできること

AIが理解できるデータ構造になっていること

AIが複数のシステムを横断して業務を実行できる環境であること

そして人間とAIの役割や責任が適切に設計されていること

が必要になると思います。

これからの経営者には、単に「どのAIを導入するか」ではなく、「AIが働くことを前提に、自社の事業や組織をどう設計し直すか」 という視点が求められます。

AIエージェントがどこまで進化するのか、まだ不確実な部分は多くあります。しかし、技術が十分に成熟してから対応するのではなく、今から自社のIT投資や業務プロセスの前提を問い直しておくことには、大きな意味があると思います。

AIを導入する企業と、AIが働くことを前提に経営を変える企業。

この二つの間に、今後大きな競争力の差が生まれていきます。