トップ / お役立ち資料 / Shoptalk報告会2024:リテールの進化とAIの革新
導入事例のアイキャッチ

Shoptalk報告会2024:リテールの進化とAIの革新

  • イベントレポート
  • メーカー
  • 小売
  • 製造
  • 顧客理解
May.10.2024
導入事例のアイキャッチ

2024年4月24日、Lazuli株式会社主催のShoptalk報告会が開催され、リテール業界の未来を形作るAI技術とブランド戦略について深く掘り下げられました。株式会社顧客時間の奥谷孝司氏や株式会社ヤプリの伴大二郎氏が登壇し、実践的な事例を交えて議論が展開されました。また第二部では東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 専攻長/教授の松尾豊氏と弊社代表取締役の萩原による生成AIによるリテールの未来をテーマに対談を実施し100名近い方にご参加いただきました。

AIの効果的な活用方法や、リテールの持続可能なビジネスモデルへの移行がテーマとして設定され、グローバルの具体的な事例を通じて、AIがいかに現代のリテール業界を変革しているかが共有されました。企業としてのブランドの構築やカスタマージャーニーの最適化に関する新しい取り組みなど示唆に富んだ内容が多数提供されました。

第一部:Shoptalkの報告〜海外リテールの最新トレンド〜

先日開催されたShoptalk2024は生成AIやメーカー、リテールが持つブランドパワー、次世代のカスタマージャーニーなどリテールの未来を見据えた5つのテーマについて各社のCMOやCDOクラスが現場目線で語るイベントです。

従来のファネル型のマーケティングモデルは破壊された。という前提の中で、コミュニティやロイヤルティプランなど、リテールもよりサステナブルなビジネスモデルへ転換していく必要があるなかで具体的な施策についてセッションが続きました。

株式会社ヤプリ エグゼクティブ・スペシャリスト / 株式会社顧客時間 プロジェクトマネージャー 伴 大二郎 氏

・AIによるリテールビジネス変革

多くのベンダーがAIを導入している現代においてAIを導入するかどうかではなく、その具体的な活用方法が焦点となりました。例えばウォルマートでは生成AIを用いた検索機能を実装し、指名検索ではなく顧客の抱える課題や願望など「ジョブ」についての問い合わせに即座に反応することで、購買体験を向上させています。また、AIの利用に際して専門家や弁護士を招き、AIの活用原則を定め、法的枠組みに先んじる速度で柔軟に対応を進めています。

このような技術は、顧客の「ウォンツ」から「ジョブ」といった購買理由を明らかにし、更なる顧客理解を深めるためのキーとなっています。しかし、生成AIのセキュリティや信頼性、知財、説明責任といった課題も存在するため、多くの企業がまずは従業員向けの導入から進めています。

・ブランドパワーの活用

ブランド力を高める戦略として、バービーがおもちゃメーカーからエンターテインメント企業へと変貌を遂げた事例が紹介されました。

バービーの映画化はアメリカでは大成功を収め、複数世代にわたって製品が購入されるなど、ファンを熱狂的なオーディエンスへと変えることに成功しました。これは、ストーリーテリングを重視したマーケティングの典型例であり、今後もテーマパークの建設やNetflixでの展開を計画しており、ブランドがオンラインとオフラインを含めたあらゆるチャネルで顧客接点を作りにいく時代になっていると示唆されていました。

・シームレスなカスタマージャーニーの構築

顧客体験をシームレスなものにするために、企業はカスタマージャーニー全体を通じて一貫したロイヤルティプログラムを提供する必要があります。

例えば、位置情報を活用したプッシュ通知や、友人との買い物かご共有機能など、技術を駆使して顧客の期待に応える方法が模索されています。

・統一された小売体験の創造

ウォルマートの例を参考に、多くの企業が顧客だけでなく従業員体験にも焦点を当て始めています。

Me@Walmartアプリは従業員の生産性を向上させるだけでなく、一般の方もダウンロードができるようになっており、採用プロセスにも利用されています。アプリから企業のミッションや価値観を一元的に伝え、従業員エンゲージメントを高める役割を担っています。

また、農薬専門店では顧客が強すぎる農薬を買ってしまい土地を枯らしてしまう事例が多発していることに目をつけ、AIを活用して顧客の位置情報から土地に関する情報や周辺の天気から最適な農薬を推奨するなど、プロダクト提供からソリューション提供へとシフトしています。

オイシックス・ラ・大地株式会社 COCO / 株式会社顧客時間 共同CEO取締役 奥谷 孝司 氏

・変化する業界関係のナビゲート

消費者の企業に対する態度は絶えず変化しています。この変化に対応するため、煩雑化したサブスクリプション管理サービスや複数のタスクを一括で管理できるエージェントのような役割が求められています。

これにより、消費者はさまざまなサービスを一元的に利用できるようになり、パーソナライゼーションとテクノロジーの進展が一層進むと見解が示されました。

また、買い物の接点はもはやどこにでも存在しており、従来のオムニチャネルアプローチから、より統合された「ユニファイドコマース」への移行が進んでいます。
この中で、再度注目を浴びているインフルエンサーやクリエイターとの連携によるアフィリエイトマーケティングが拡大しています。

Amazonは、リテールメディアについて単に検索結果で上位に表示するのではなく、コンバージョンを促進するための広告から、カスタマージャーニーの各接点で新しい発見を提供する方法へとシフトしています。

このことから、リテールメディアはカスタマージャーニー全体にわたって統一されたメッセージを発信し、より効果的な顧客エンゲージメントを実現することを目指しています。

このようにShoptalk報告会は、AI技術とデジタル戦略がどのように小売業界全体を革新しているかを示す貴重な機会となりました。

第二部:生成AIで進化するリテールの未来

Shoptalk報告会の第二部では、生成AIの進化がリテール業界にもたらす可能性に焦点を当て、東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 専攻長/教授の松尾 豊氏とLazuli株式会社 代表取締役 萩原が日本におけるAI技術の進展と応用について語りました。

松尾氏は、日本は生成AIの分野でスタートでは遅れを取っていたとはいえ、生成AIの導入においてはOpen AI との連携など迅速かつ適切な対応を見せていると評価しました。

第二部の様子

昨年、日本は大量のGPUを購入し、経済産業省もその動きを支援しています。このような政府の後押しと企業の積極的な投資により、生成AIの商用利用が加速しています。

また、GPTを利用した社員向けの検索ツールの開発が進むなど、次世代技術の活用が企業間で拡がっていることも良い傾向との見方をしています。

萩原は、リテール業界におけるAIの応用例として、特にアメリカで進んでいるAIを活用した接客や問い合わせ対応の事例を紹介しました。

これらの技術は顧客サービスの質を向上させ、よりパーソナライズされたショッピング体験の提供につながっています。また、従業員のエンパワーメントにもつながっており、やりがいや本質的な課題解決に人間の力を使うことができるとの見方をしています。

現在アメリカや中国は生成AI分野で世界をリードしていますが、日本が生成AI分野で世界と競争するためにはアプリケーションが鍵であり、AIの使い方を試行錯誤していくことで大きな変化を起こすような可能性を見い出せると述べました。

また、東南アジア市場においてはまだ多くのチャンスがあるとみられております。シンガポールのAI戦略では東南アジアLLMを作り、周辺国を繋ぐようなプロジェクトをシンガポール主導で進めたいと構想しているようです。このプロジェクトにより、日本企業がシンガポールと技術連携していくことで東南アジアへの進展が期待されています。

セッションの最後はプロダクトデータの重要性にも焦点が当てられました。すでに多くの企業が商品説明文の生成などにAIを活用しており、その結果として業務の効率化と顧客体験の向上が図られています。一方で商品データの統合と名寄せは解決すべき根本的な課題であり、整備されたデータに生成AIを組み合わせることで、データの価値が飛躍的に向上すると述べられました。

最後に、松尾氏からLazuliに対する期待が語られました。

右)東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 専攻長/教授 / 松尾 豊 氏、
左)Lazuli株式会社 代表取締役 萩原 静厳

Lazuliの技術が幅広く導入されることで、商品情報の整理や拡張に貢献し顧客体験の向上に寄与するとの意見がありました。商品情報に限らず、将来的に自治体などの行政システムのデータ統合など、さまざまな分野での非効率がLazuliの技術を活用し解消されることが期待されています。

まとめ

本イベントでは先進的な取り組みをしている企業の生成AIやブランド戦略をShoptalk参加者のみなさまから紹介してもらい、リテール業界の未来を形作るための具体的かつ実践的な洞察を深めていただきました。

その後の松尾氏のセッションでは諸外国の動向から日本企業がどのように生成AIを活用し、更なるビジネスチャンスを広げていくためにどうすれば良いかを提言されました。

最後のセッションではLazuliの技術について言及され、その可能性と今後の期待についても語られました。

終了後のネットワーキングタイムでも多くの意見交換が交わされ、参加された皆様の笑顔から満足度の高い有意義なイベントになったのではないかと自負しております。

当社では今後も国内外問わず有益な情報をみなさまにお届けできるよう発信してまいります。今回ご参加できなかったみなさまも次回は会場でお会いできることをLazuliメンバー一同心待ちにしております。

最後に、今回のShoptalk報告会にご協賛いただいた企業のみなさま、誠にありがとうございました。

Special thanks to
株式会社 顧客時間:https://www.kokyaku.co.jp/
株式会社ヤプリ:https://yappli.co.jp/
株式会社ブレインパッド:https://www.brainpad.co.jp/
株式会社 UNCOVER TRUTH:https://www.uncovertruth.co.jp/