アサヒビール社は、2023年からLazuliの「外食AIリサーチ」を導入いただき、外食企業向けの営業で活用されています。「外食AI」は、1500店舗以上の飲食店POSデータを統合し、ドリンクとフードの販売数や客数、客単価などを簡単に分析できるよう、クリーニングされたデータベースです。
今回は、営業本部営業部外食支援グループ主任の内海達さんが、スーパードライというトップブランドを有するアサヒビール社が実践する驚きの営業スタイル、そのなかでの先進的なデータ活用を、惜しげもなく語ってくださいました。営業、マーケティングに携わる方は必読のインタビューです。
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導入前の課題
営業部門が飲食店に対して売上・利益を上げるさまざまな提案を行っていたが、根拠となるデータがなく、経験や感覚に頼った提案を行っていた。統合されたPOSデータが取得できず、リアルタイムでのデータ取得が難しかったため、市況の把握ができていなかった。
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導入後の効果
名寄せなどの手間なく、外食の市況をリアルタイムで把握できる飲食店のPOSデータを入手できたことで、営業戦略の策定や現場での提案に活かせる分析ができるようになった。
- 御社の営業の体制と、そのなかでの内海さんの業務内容を教えてください。
アサヒビールの営業には、スーパーやコンビニエンスストアなどをターゲットとする量販部門と、レストラン、居酒屋、バーなどを対象とする外食部門があります。私たちは後者の外食部門に所属し、後方から現場の営業を支援するサポート機能を担っています。
当社の営業スタイルは非常に特殊で、外食企業にアプローチして、自社の商品を採用していただくだけでなく、お店の経営に関わるところから提案しています。メニューの内容や順番まで考えたり、周辺の商圏情報を調べたり…。新規出店すると聞けば、物件探しをお手伝いしたり、食材卸や内装の会社をご紹介することもあります。
現場の営業は、日常的に外食企業の売上・利益の向上につながる打ち手を考えています。彼らがよりよい提案ができるよう、その裏付けとなるエビデンスを用意するのは、私たちの重要な役割です。
- メーカーの営業さんが、そこまで入り込んでいるとは思いませんでした! そのなかで当社の「外食AIリサーチ」をご導入いただいた理由も教えていただけますか?
はい、目的はふたつありました。
ひとつは、外食全体の市況を把握して、外食営業の大きな方針を決めることです。経営陣が営業戦略を判断する根拠として、データを活用しています。
例えば、当社では生ビールの「品質向上」を、顧客である外食企業に訴えてきました。私たちが良いものをつくるのはもちろんですが、生ビールは店舗ごとの提供方法によって、品質が大きく左右されます。注ぎ方、サーバーのメンテナンス、グラスの洗い方に至るまで、お店の協力が必要なのです。
私たちは、今の市況において、その方針が間違っていないということを、データで示しました。
物価高の昨今では、外食の客単価も上がるものと思いきや、実は横ばいになっています。お客様は来店時にあらかじめ予算を決めてお店に入り、予算をオーバーしないよう注文数を減らしていることが、データで裏付けられました。 もう一杯、もう一品、注文していただきたい。そのためには、お金を払っても良いと思える魅力が、これまで以上に重要となってきます。このデータの裏付けをもとにすると、生ビールの品質を上げる努力がお店の売上につながる、という提案ができるわけです。
- なるほど。ビールの提供品質を高める活動が、お店の利益に直結するということがデータで明らかになれば、自信を持って提案できますね。
そうなんです。そして、もうひとつの目的は、外食企業への個別の提案時に、データを現場の営業の武器としてもらうことです。
ドリンクやフードのカテゴリごとの売れ行きや、一人あたりのアルコール注文数など、細かいデータを把握できます。自店だけでなく、飲食店全体の市況を参考にして、新たなメニュー開発をしたり、同業態の平均より注文数が少なければ対策方法を一緒にディスカッションする、など様々な提案に活用できます。
- 営業におけるデータの有用性は、以前から感じていたことと思います。「外食AIリサーチ」を導入する以前は、どのようにしていたのでしょうか?
量販向けの営業部隊では、自社商品はもちろん他社のアルコール飲料や食品まで、小売企業から提供されるPOSデータを参照して、提案に活用しています。商品はすべてJANコードにひも付いていて、何がどれだけ売れたかを把握することができます。
外食の領域では、同じようにあらゆるPOSデータを統合しているデータベースがありませんでした。一部の外食企業から個別にPOSデータの提供は受けていましたが、市況を把握できるほどの量ではありません。
それでも、それらのデータの活用には取り組んでいました。しかし、小売企業からいただくPOSデータのように商品がJANコードとひも付いていないのが厄介です。同じ生ビールでも、「ビール」「生中」「生」と表記がバラバラで、マスタデータの整理にぼう大な手間と時間がかかっていました。
「外食AIリサーチ」は、まとまった量のPOSデータをすぐ分析に使える整理された状態で提供してくれます。
また、リアルタイムに近いデータが見られるのも助かっています。週明けには前週のデータが見られるので、顧客へのタイムリーな情報提供ができるようになりました。
特に繁忙期の前後には、現場では「年末年始の市況はどうだったの?」など、外食企業から営業に問い合わせをいただくことがよくあります。そのとき、すぐにデータを提供できれば、喜んでいただけます。
- データを管轄する内海さんの部署には、多くの要望が寄せられるのではないでしょうか?
そうですね。外食の市況は元々ブラックボックスになっていましたが、一度見えるようになると嬉しくなって問い合わせが増えています(笑)。
営業スタッフは、全国におよそ1000人いるのですが、データをパブリッシュしてから6カ月で255名が市況データを閲覧しています。
また、市況データは現場に即しているほど有用性を増します。顧客が運営するお店の地区や業態、席数、価格帯などに合わせて分析すると、さらに提案の精度が上がるのです。営業からひっきりなしに届くデータ分析の要望に、私たちは少数精鋭で対応しているので大変です(笑)。
- ありがとうございます。Lazuliや「外食AIリサーチ」へのご要望はありますか?
都市や主要な業態では十分ですが、地方やマイナーな業態など、粒度を細かくすると、データの母数が足りないと感じています。私たちの営業部隊は、全国津々浦々の飲食店様を顧客としているので、どこへいっても確度の高いデータが活用できると実態に基づいた提案ができるようになると思っています。
- ご期待に添えるようアップデートしてまいります。最後に今後のデータ活用の展望を教えてください。
当社は「期待を超えるおいしさ、楽しい生活文化の創造」をミッションとし一般消費者の方に「最高の商品を最高の状態で、最高の気分で楽しんでいただく」ことを目指しています。
ただ、メーカーから直接消費者に商品を届けることはできません。ビールの物流は「生販三層」と言われ、メーカーが出荷すると、商品はまず卸へ、そこから小売の酒販店へと移ります。外食の場合はさらに飲食店を経て、消費者に飲んでいただけるわけです。
ですから私たちは、様々なバリューチェーンを通して、ミッションを果たさなければなりません。ところが、従来はそのバリューチェーンの中でいろいろなものが見えなくなっていました。
卸から小売までの販売データはわかるのですが、そこから先、肝心の消費のシーンが見えていなかったのです。お客様がスーパーで缶ビールを何本買ったかがわかっても、実際に家でどのように飲まれているかはわかりませんよね。
外食のPOSデータは、実際にどのように飲まれているのか、という飲用の場面、消費の実態を明らかにしてくれます。精緻に分析すれば、ビールを何時に、何と一緒に、何杯飲み、その後何を飲んだか、といった行動までみえてくるのです。
これは、マーケティング上で非常に価値のあるデータです。経営陣からの期待も大きく、役員会議で外食の市況をプレゼンテーションするよう、求められたこともありました。
社長の松山一雄はマーケター出身で、データ活用の意識が高い人ですから、外食営業はもちろん、量販部門への展開も考えていると思います。
今まではデータの基盤を整備してきましたが、今後はより分析に力を入れていきたいと考えています。外食企業に対して、エビデンスに基づいた説得力のある提案ができるよう現場の営業をサポートし、データを活用しながら会社として掲げるミッションを果たしていきたいと考えています。
アサヒビール株式会社ホームページ:https://www.asahibeer.co.jp/
Lazuli PDPとは:https://lazuli.ninja/features/