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AIエージェントを全社員に配った会社が学んだ5つのこと|Lazuli Executive Briefing 2026.7.17

AIエージェントを全社員に配った会社が学んだ5つのこと|Lazuli Executive Briefing 2026.7.17

Generative AI

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こんにちは。
Lazuli CEOの萩原です。

今日は、AI業界で今最も注目されているスタートアップの一社であるSierraの記事をご紹介したいと思います。

Sierraは2023年に、Salesforceの共同創業者で元共同CEOのBret Taylor氏と、Googleで検索やGoogle Mapsなどを率いたClay Bavor氏によって創業されたAI企業です。

企業向けのAIエージェントプラットフォームを提供しており、顧客対応やカスタマーサポートをAIエージェントで実現するサービスを展開しています。創業からわずか2年程で企業価値は約45億ドル(約7,000億円規模)とも評価され、OpenAIやAnthropicと並んで、AIエージェント市場を牽引する企業として世界中から注目されています。

今回ご紹介するのは、そんなSierraが「自社そのものをAIネイティブな会社へ変えていく中で、何を学んだのか」をまとめた記事です。

https://sierra.ai/uk/blog/ai-pilling-our-company-lessons-learned

AIを導入したという成功事例ではなく、AI時代の会社の設計思想そのものがどう変わるのかが書かれており、多くの経営者にとって示唆の多い内容だと感じました。

今日は、その中でも特に印象に残った5つのポイントをご紹介します。

①AIは部署ごとではなく、「会社に一人」が良い

最初、Sierraは営業用AI、エンジニア用AI、分析用AIなど、役割ごとにAIエージェントを作っていました。

しかし、これはうまくいかなかったそうです。

言われたらその通りなのですが、理由は「会社の仕事は部署単位で完結しないから」です。

例えば「顧客への提案」には営業だけでなく、過去の契約情報や製品仕様、開発状況など、複数の部門にまたがる情報が必要になります。

そのたびに、「これは営業AIに聞くべきか、開発AIに聞くべきか、それとも分析AIなのか」と、人が判断しなければならない。これではAIを使うたびに迷いが生まれ、かえって使いづらくなってしまいます。

そこでSierraは、最終的にすべてを一つのAIエージェントへ統合しました。

社員は"一人のAI"に依頼するだけでよく、必要なシステムへのアクセスや複数部門にまたがる情報収集は、AIが裏側で自律的に行います。

つまり、

「人がAIを使い分けるのではなく、AIが会社の複雑さを吸収する」

この設計こそが、AIネイティブな組織のあるべき姿だというわけです。

②AIは質問を待つ存在ではなくなる

多くの企業では、AIを「聞きたいときに使うツール」として導入しています。

もちろん、それだけでも便利ですが、Sierraはここに限界があると考えました。

人は忙しくなるほど、「AIに聞く」という行動自体を忘れてしまうからです。

また、毎回「何を、どう聞けばいいか」を考えることも、小さな負担になります。

そこでSierraが目指したのは、AIが質問を待つのではなく、AIが仕事の流れを理解して自ら動く世界でした。

例えば、会議前には関連資料を自動で準備する。
面接後には評価コメントのドラフトを作る。
レビュー依頼が来たら、要約まで終わらせておく。

つまり、人がAIを呼び出すのではなく、AIが仕事のコンテキストを理解し、必要なタイミングで先回りして支援する。

AIは「使うツール」から、「一緒に働く同僚」へと進化していくという考え方です。

③AIの性能よりも、「コンテキスト」が重要になった

この記事の中で私が最も共感したのが、この一文です。

AIのボトルネックは知能ではなく、ビジネスコンテキストになった。

Sierraは当初、「より高性能なAIモデルを使えば、もっと賢くなるはずだ」と考えていました。

しかし実際に社内で使い込んでみると、モデルを最新のものに切り替えても、業務で得られる価値はそれほど大きく変わりませんでした。

一方で、社内のSlackやSalesforce、GitHub、契約書、過去の意思決定、顧客とのやり取りなど、その会社ならではの情報にアクセスできるようになるほど、AIの回答精度や実用性は飛躍的に向上したそうです。

つまり、今やAIそのものの知能は十分に高くなっています。

本当に差が生まれるのは、

「その会社だけが持つコンテキスト」をAIがどれだけ理解できるかです。

Lazuliでも、ただ商品情報を整理するのではなく、その商品が持つ意味や特徴、利用シーンまで含めた「AIが理解できるコンテキスト」を生成しています。

これは、Sierraが語る考え方とまさに同じ構造です。

AIは一般知識だけでは十分な価値を生み出せません。企業固有のデータや業務コンテキストと結びついて初めて、現場で使えるアウトプットを生み出せるのだと改めて感じます。

④AIは新しいシステムではなく、既存システムの入口になる

Sierraは当初、AIを中心とした新しい業務の進め方も模索していました。

しかし実際には、社員はGitHubで開発をし、Salesforceで顧客情報を見て、Linearでタスクを管理します。長年使い慣れた業務システムを、AIのためにすべて置き換えることは現実的ではありませんでした。

そこでSierraが行き着いたのは、「既存システムはそのまま活かす」という考え方です。

GitHubはGitHub。

SalesforceはSalesforce。

LinearはLinear。

それぞれの役割は変えず、AIがそれらを横断して利用できる共通インターフェースになります。

社員はAIに依頼するだけで、必要な情報を複数のシステムから集め、整理し、仕事を進めてくれる。

つまり、AIは新しいシステムではなく、会社に存在するあらゆるシステムへの「入口」になるという発想です。

これは非常に現実的な考え方だと思います。

多くの企業には、すでに数多くの業務システムが導入されています。すべてを作り直す必要はありません。AIがそれらをつなぎ、人がシステムを意識しなくても仕事が進む世界こそ、多くの企業が目指すべき姿なのではないでしょうか。

⑤本当に見るべきKPIは「利用回数」ではない

Sierraでは、社内のほぼ全社員がAIエージェントを日常業務で利用し、7万5,000回以上のセッションが実行され、ソフトウェア開発ではPull Requestの約70%がAI経由で作成されるなど、AIが業務の一部として定着しています。

こうした数字だけを見ると、AI導入は大成功のように見えます。

しかし、Sierraが運用する中で気づいたのは、「利用回数」や「トークン数」は、AIがどれだけ使われたかを示す活動量でしかないということでした。

AIを100回使っても、仕事の成果が変わらなければ意味がありません。

だから彼らが本当に見るようになったのは、

  • 商談が早く決まったか

  • 顧客対応の品質が向上したか

  • レビュー時間が短縮されたか

  • 社員が家族との時間を増やせたか

といった、事業や働き方にどんな変化を生み出したかという「アウトカム」です。

つまり、

AIを何回使ったかではなく、AIによって何が変わったのか。

その成果を測る指標を最初に定義できる企業こそが、AIを本当の競争力へと変えられるのだと思います。

Sierraの記事を読んで印象的だったのは、「AIを導入した成功談」ではなく、「実際に運用してみて、考え方を何度も修正した記録」だったことです。

AI時代は、正解を最初から知っている会社が勝つわけではありません。

そもそも正解は各社それぞれにあることでしょう。
AI Agentは人・組織を活性化するものなのですから。

だからこそ、

積極的に試し、学び、設計を変え続けられる会社が強くなっていくと思います。

Sierraの5つの学びは、これからAIネイティブな組織を目指すすべての企業に共通する示唆なのではないでしょうか。


萩原 静厳

CEO, Lazuli株式会社