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AI時代の競争優位は「モデル」ではなく「実装」にある ― Palantir CEO Alex Karpが語る「実装企業」の価値|Lazuli Executive Briefing 2026.7.9

AI時代の競争優位は「モデル」ではなく「実装」にある ― Palantir CEO Alex Karpが語る「実装企業」の価値|Lazuli Executive Briefing 2026.7.9

Generative AI

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こんにちは。

Lazuliの Co-Founder / CEO 萩原です。


みなさん、Palantirという会社をご存じでしょうか。昨今のAIブームで大変有名になった企業ですが、一言で言うと、

「企業のデータをAIが活用できる形に整理し、

   経営や現場の意思決定を支援するプラットフォーム企業」

言語化するとアタリマエな感じですが、支援しているラインナップがものすごいです。

たとえば、企業ではAirbus、Hyundai、BP、Pfizerなど、各カテゴリの名だたるグローバル企業に入っているだけでなく、政府機関も支援しており特に米国政府では、CIA、FBI、NSA、国防総省などに入りこんでおり、ウクライナ政府の支援もしています。

つまり、エンタープライズAI支援の世界トップ企業です。

ちなみに時価総額は3000億ドル超(約45-48兆円:7/8時点)で、世界トップ20、Netflixと同じくらいになっています。

そのPalantirのCEOであるAlex Karp氏が、先日CNBCのインタビューで、AI時代の企業競争力について非常に示唆に富む発言をしていました。

https://www.youtube.com/watch?v=jlIYbP5XJ-g

ウォール街の投資家とエンタープライズ(企業)の現実の乖離

インタビュアーがいきなり切り出します。

「ウォール街の投資家たちは、『台頭するAI企業や大規模言語モデル(LLM)がPalantirの事業を代替・再現できるのではないか』という懸念を抱いています。それについてどう思いますか?」と。

しかしKarp氏は、

「エンタープライズ(企業)の現場で、実際にそのことを心配している人間は誰もいない。」

「Palantirは最も複雑な課題を抱える企業の最前線に立っており、現場では誰もLLMの代替を心配していない。」

と一蹴します。

さらに付け加えて、

「投資家たちは企業の現場や技術的な課題を全く理解しておらず、『カフェラテを飲みながらレポートを読んでいるだけ』だ。」

と投資家に向けてやや皮肉を込めたコメントをしています。

シリコンバレーのAI企業に対する批判

Karp氏は続けて、

「彼らが『システムをデプロイするだけでPalantirを再現できる』と考えるのは【完全な茶番】だ。」

「そのような企業(AI/LLM企業)のエンジニアは優秀だが、彼らは企業と対話していないか、技術的な課題を理解していない。」

さらに付け加えて、

「彼らの提供する製品は高価な割に実際には機能せず、彼ら自身がエンタープライズ顧客からいかに好かれていないか(反感を買っているか)を自覚していない。」

「シリコンバレーのAI企業には、『明日になればAIがすべての問題を解決してくれるから、今日目の前にある問題を解決する必要はない』という、半ば宗教的な雰囲気が蔓延している。」

と指摘しています。

大規模言語モデル(LLM)の限界と適性

Karp氏の発言には、技術的に以下の背景があります。

「LLMは【確率的】なシステムであり、51%程度の精度が出れば十分な投資などの分野では非常に有用だ。」

「一方で、自動車の製造、月へのロケット打ち上げ、あるいは軍事(ミサイル防衛や兵士の安全確保)など、失敗が許されないハイエンドな企業の現場では、現在のLLMはそのままでは使い物にならない。」

と指摘しています。

ちなみに確率的なシステムが有用なのは「投資業界」だと、Karp氏は例示しています。

つまり、投資は本質的に確率を扱うものであり、半分よりわずかに高い確率(51%)で正しい判断ができれば、優れた投資家として成果を上げることができるからです。

(もちろん確率はもっと高い方が良いですが笑)

加えてインタビュアーから、

「Anthropicは味方か敵か、競合かパートナーか」

と問われた際に、

「彼らが公に話していることのほとんどはPalantir上で動いている」

と発言しています。

つまり、LLMは賢いが嘘もつくしすぐ忘れる、それを精度と継続を担保させる【確固たる技術基盤(ハーネス)】が必要で、それが顧客の課題解決に直結する【LLMと似て非なるもの】だということです。

今後のAI市場の展望:「実装」の重要性

Karp氏は、

「LLMが世界にとって重要ではないと言っているわけではない」

と前置きしつつ、

「少なくとも今後7年間はAIの『実装(現場への導入・活用)』の部分にこそ間違いなく価値が生まれる。」

とし、Palantirはそこに大きく賭けているといいます。

ちなみになぜ7年かというと、10年先の未来については予測不可能であり、

「病原体によって人類が滅亡するリスクと同じくらい(何が起こるか)分からない」

と締めくくっています。

LLM企業とソフトウェア企業の境目

この一連のやりとりは、現在のLLM企業とソフトウェア企業の境目を明確にしています。

OpenAIやAnthropicのようなLLM企業は、例えるなら【高性能なエンジンを作る会社】です。

AIモデルは今後も進化し続けるでしょう。

より賢くなり、より正確になり、より多くのことができるようになるはずです。

しかし、

企業が本当に欲しいのはエンジンそのものではありません。

企業が欲しいのは、

・売上を伸ばすこと

・業務を効率化すること

・意思決定を高度化すること

・顧客体験を向上させること

つまり【成果】です。

Palantirや、私たちLazuliのような実装企業は、そのエンジンを使って実際に「レースで勝つための仕組みを作る会社」です。

・どのデータを使うのか。

・どのシステムと連携するのか。

・誰が承認するのか。

・どの業務プロセスに組み込むのか。

こうした「現場で成果を出すための実装」を担い、顧客企業の【勝利】のためにいるのです。

だからKarpは、

「LLMがPalantirを置き換えると本気で思っている人間は社内に一人もいない」

と言い切っているのです。

これは決してLLMを軽視しているわけではありません。

むしろ、

「LLMは非常に重要だ。しかし価値が生まれるのはモデルそのものではなく、それを現場で成果につなげる実装だ」

というメッセージなのだと思います。

AI時代において重要なのは、どのモデルを使うかだけではなく、

そのAIをどう現場に実装し、どう成果につなげるか。

これがエンタープライズにおいて最も重要な視点であり、PalantirやLazuliがこだわって取り組む(取り組まなければならない)ポイントです。

AI内製化

最後に、

「AIモデルを試すことと、業務プロセスに組み込み継続的に価値を生み出すこと」の間には大きなギャップがあります。

つまりPoCと、実装運用との間には、業務理解・データ整備・システム開発・品質保証・運用体制、など各種コミットメントが必要で、そこはAIモデルを作る人・スキル・Claudeを動かすだけではできない部分が広く存在しているということです。

「私たちはAIを作れているだろうか。それともAIを実装できているだろうか。」

Karpの言う「価値は実装にある」という言葉は、AI活用を進めるすべての企業に対する重要な問いかけなのだと思います。

この二つは似ているようで、まったく異なるものなのかもしれません。

今回は、エンタープライズ市場におけるAIおよびLLMの活用や事業導入における勘所について少しお伝えしました。今後もこのように「AI」や「エンタープライズ」における思考方法や取扱いの勘所に関して、厳選してお届けしてまいります。

皆さまの次の一手を動かす、有益なディスカッションの契機となれば幸いです。

次回もぜひご期待ください。

末筆ではございますが、皆さまのますますのご健勝と貴社のさらなるご発展を心よりお祈り申し上げます。

どうぞよろしくお願いいたします。


萩原 静厳
CEO, Lazuli株式会社